大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和43年(行ケ)110号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)

二、コンベャーベルトの特定部分の荷重に対応する変位量を検出して、これとベルトの移動速度との積分値によつて、コンベャーによる移送総量を積算表示せしめることは、本願出願前公知の技術であつたこと、一般に測定技術の基礎として変位法も零位法も用いられていること、零位法による測定技術として各種のタイプのトルク平衡装置がすでに知られていることは、原告も認めて、争わないところである。

一般に、測定技術として、零位法は、測定対象と独立に大きさを調整できる既知の標準量を別に用意し、この標準量を被測定量と平衡させ、そのときの既知の標準量の大きさから被測定量を知る方式であり、この平衡を測定者自身が行ない、あるいは自動的に行なわせるものであつて、変位法では指針などを動かすエネルギーを測定対象から取り出して測定するのに対し、零位法では、観測者が必要なだけそのエネルギーを供給して測定し、したがつて、測定対象の状態を乱すことが少なく、摩擦などに原因する誤差が少ない特色を有するものであることが本願出願前普通に知られていたことは、本件弁論の全趣旨に徴し明らかなところである。したがつて、零位法は、用意してある標準量が正確であれば検出器の許す範囲の正確な測定が可能であり、変位法より測定精度においてまさるものということができる。

そして、零位法が測定技術として知られており、しかも、零位法にトルク平衡装置を加えたものがすでに公知であることは、当事者間に争いがない。また、成立に争いのない甲第四号証(「テレメータリング」昭和三十二年オーム社発行、四十九頁から五十頁まで)には、零位法によるトルク平衡装置の例として、「いまFなる測定量に比例する機械力、或いは電磁力が作用して天秤の支点に対してトルクが作用したとすれば、これが傾いて刷子が動き電気回路の抵抗が変化する。天秤の他の腕に取りつけた鉄片はS(ソレノイド)に流れる電流によつて吸引力を受け天秤をもとに戻す方向のトルクを発生させる。両方のトルクが等しくなつた所で天秤は静止する。この場合にSに流れる電流は測定量に比例するから遠隔に置いた計器MでFの量を測定することができる。」(図面省略)旨記載されていて、零位法におけるトルクの自動平衡装置が明記されている。

これらの事実に徴すれば、コンベャー用計重機のうち従来のメリック式自動累加機においては、その計量部分のベルトの張力の変化が、その測定誤差に影響を及ぼすことは、その構造からみて当然予想されるところであり、(本願発明の特許公報――特公昭三九―一八四三九)参照)、したがつて、この測定誤差を最少ならしめるために、前認定のような特徴を有する零位法にトルク平衡装置を加えたものをこれに適用することは、当業者において必要に応じて容易に推考しうる程度のものにすぎないものと認めるのが相当である。

この点について、原告は、本願発明は、コンベャー用計重機に単に零位法を適用したものではなく、ベルト張力の変化による計量誤差を除くため、本願発明における特許請求の範囲第一項にいう「上記平衡装置を、原平衡位置に復帰せしめて、コンベャーベルトを原状態に戻す手段」特許請求の範囲の記載参照)を設けたものである旨を主張するが、この主張は、叙上認定にかんがみ、これを採用することができない。

結局、本願発明は、コンベャー用計重機に、計量上の誤差を少なくするためその効果の知られていた零位法にトルク平衡装置を加えたものを適用した装置を設けたものと解せられ、それ以上に特段の作用効果が生ずるものとはいいがたいから、原告の主張は、失当というほかない。

(むすび)

三、以上説示したとおりであるから、その主張のような違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は理由がないといわざるをえない。よつて、これを棄却する。(服部高顕 三宅正雄 奈良次郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!